連載・左翼と右翼と無欲の博打、1(h-tomiyama)

<無欲の博打> 「日本政界希望の星」?・山本太郎と末期資本主義のあだ花・MMT、両者の危うい親和性について。1

 最初にお断りしておきますが、私は山本太郎氏には悪感情を持っていません、と言うより好感を持ってさえいます。社会的弱者に寄り添う姿勢、利己心を退けた清潔感際立つ人物像、若さとバイタリティーがあふれる行動力などなど、少なくとも人物としての出来栄えは出色だと思っています。だからこそ、彼のもとに多数の異能のボランティアが集まり、個々には小口であっても驚くほど多数のカンパがあり、短期間では異例の多額の政治資金が集まったのでしょう。しかしです。「人物をとるか、政策をとるか」という昔から常に発せられる問いに答えれば、やはり、「政策をとるべき」とのセオリーに従うのが常道であろうと思います。ですから、私は太郎氏が政治家として更なる成長をしてほしいとの思いを込めて、僭越ながら意見を述べたいのです。

 先の参院選で大ブレークした山本太郎さん、その政策チラシ、「政権とったらすぐやります!」との見出しをつけ、8つの政策を並べています。さらりと見て、100%不可能なものを含めて相当に無理っぽい感じがしました。まず、「消費税は廃止」、これは賛成です。ただ、「すぐやります」が「廃止に向けての検討をすぐ開始します」という意味なら問題ないと思いますが、ネット経由の太郎さんの街頭演説を聞いていると、どうやら「即時廃止」を本気で考えているようなニュアンスが伝わってきて、印象として、何となく危うい雰囲気を感じてしまいました。公式ホームページでは、ここのところは「まず、5%に減税」と現実的なプランに修正されていますが、「すぐやる」と「まず、5%に減税」のズレ、全廃までのプロセスについての言及はありません。ただ、彼の政権奪取がありうるとしても、「すぐに」というのは難しいですから、選挙用チラシに、この程度のインパクトを持たせるのは許容範囲だとも思います。

 問題は「全国一律!最低賃金1500円 政府が補償」など、8つのうち半分の4つが所得政策だという点です(ちなみに、彼の政治家としての出発点でもある「原発即時禁止」は8番目の最後に回しているのは、経済問題以外をトップ政策に掲げたら支持が得られにくいという、選挙戦術上の配慮らしいので、この点に異論をはさむつもりはありません)。雑誌名は覚えていませんが、これらの所得政策を「すぐに」実施したら、50兆円もの財源が必要だとの指摘がありました。50兆円という数字にどれだけの信憑性があるのかわかりませんが、自民党がときどきぶち上げる「大型補正予算」をはるかに上回る予算措置が必要なのは間違いないはずです。ですから、彼の主張に対して、いろんなところから「財源はどうするのだ?!」との批判があります。その財源について、選挙用チラシは紙面の制約があり、何もふれていないのは仕方ないでしょう。しかし、「れいわ新選組公式ホームページ」をのぞいても財源問題についてはまったく触れていないし、経済政策への提言も見当たりません。本気で近い将来の政権奪取を狙うのなら、この点を批判されても当然だと思うのです。(続く)