連載・右翼と左翼と無欲の博打、2(h-tomiyama)

<無欲の博打> 「日本政界希望の星」?・山本太郎と末期資本主義のあだ花・MMT、両者の危うい親和性について。2

  情況と同時進行して書く「日々短観」は、なかなか厳しいですね。山本太郎氏の政策「消費税廃止」を「すぐやります」は無理っぽいことを述べる予定でしたが、<本尊様>のほうが、先取り修正したようで、「れいわ・山本代表、消費税5%減税を旗印に安倍政権打倒をよびかける」というニュースが流れています(10/16に別掲)。「消費税5%減税」を軸に野党共闘を目指すみたいですから、明らかに本格的路線修正、もちろん、大賛成です。現実の経済状況は生き物みたいなものですから、10%になったものが、いきなりセロ%に戻れば、これは30年近く時代を逆行するわけで、<生き物>が環境不適応となって、ショック死するかもしれません。妥協できるレベルなら躊躇なく妥協する、それがリアルポリティクスというものです。あの共産党でさえ、どんどん路線修正して、今なら戦前の本格右翼レベルと「反安倍」で共闘できるところまできてますからね。安倍晋三を「最右翼」とか「戦後最悪の首相」だとか「町内会の役員程度のレベル」と評するのは、とんでもない間違い、そろそろやめたほうがよいと思っています。私、以前「安倍は町内会役員程度がいいところ」と言って「それは世の中の町内会役員に失礼だ」と叱られました。確かにそうです。安倍晋三に町内会役員は務まらない、生身の人間として他者と直接やりとりして調整していく町内会役員は、第一に人格を問われる場面が多い。安倍には無理だ、断定して間違いないと思います。はっきり言って、彼は刑務所に入るべき人物ですよ(項を改めて記載予定)。別掲の鼎談にて、平野貞夫氏が「山口組の4代目が、戦前の日本の戦争、あれは侵略戦争だと思いますか、と問われて、当たり前だ、侵略戦争だ、よその縄張り荒らしに入ったのだから」、4代目がそう答えたことを引き合いに出して「山口組の組長に首相は務まるが、安倍晋三山口組の組長は絶対務まらない」と笑いながら言ってましたが、安倍晋三の余生にふさわしいのは、せいぜい刑務所の囚人が輪番でやる便所掃除あたりでしょう。私は寛大なのです。先日、久々にネット掲示板を覗いたら、「安倍首相、内乱予備罪で刑事告訴……」という記事へのコメント欄に「死刑相当が妥当」と言ってる人がいました。この意見、時代が時代ならあり得たかもしれません。なにせ、天皇退位式という最高度の国家行事の場で天皇に対して「早く死ね」ともとれる「大失言」をやらかして、謝罪するどころか、内閣府に自らの発言を全面否定させたのですから、安倍の望むとおり?戦前回帰したら軍部は黙っていませんよ、「国家反逆罪」とか「大逆罪」で首を吊るされても不思議はないでしょう(この問題も項を改めて述べます)。

 余談が長くなりました。今回はれいわ新選組・太郎氏の消費税即時廃止方針に関連して、財源問題について論評する予定でしたが、太郎氏の方針転換に伴ってこれは次回にまわし、選挙用チラシについて一点だけ批判記事を記しておきます。
 前回記事にて「100%不可能な」政策があると指摘しましたが、太郎氏ファンの方から「そんなのある?それ何?!」と尋ねられました。政策チラシの1から5、すべて細かく批判したいところがあるのですが、自民党なんかもっと酷いし、揚げ足取りだと言われかねないので、一点だけ。
 選挙用チラシの5を以下そのまま引用します。
「5 一次産業個別所得補償
 食料安全保障は国を守る上で最重要事項。あまりに低すぎる食料自給率を100%目指して大改革。第1次産業に就けば安定した生活が送れるよう政府が個別補償」
 上の選挙公約中の「食料自給率100%」は100%無理です。自給率100%を目指すこと自体が現実的に無理ということもありますが、これは本質的に間違った政策だと思いますね。単に「食料自給率」という場合、通常は「総合食料自給率」を指すわけですが、これにも「カロリーベース総合食料自給率」と「生産額ベース総合食料自給率」という概念があり、マスコミなどが農林水産省の意向を「忖度」して「日本の食料自給率がとうとう史上最低になった」と煽り記事を書いているのは、前者のほうです。後者の「生産額ベース」のほうは、ここ10年ほどは60%台後半で安定的に推移しています。はっきりとした国際比較を調べたわけではありませんが、この数値はG7国の中で極端に低い数字ではありません。日本は島国・先進国なので何かにつけてイギリスとよく比較されますが、イギリスの「生産額ベース」は60%を割っています。「いや、やっぱりカロリーベース自給率が低いのは問題だろう」という声が聞こえてきそうですが、そもそも食料自給率を個別に分類して議論することは、あまり意味はないと思います。参考2をご覧ください。「カロリーベース自給率」を重視して自給率を上げたいのなら、それはそれで可能です。パターンDを指標にとった食料政策を選択すればよいのです。でも、食べ物への好みが多様化する時代に、そんな政策が広く受け入れられるとは到底考えられません。「穀物自給率100%」「芋自給率100%」「大根自給率100%」etc.  これなら安心だという人がいるでしょうか? まあ、「毎日毎日、オレは芋と大根だけ食ってても大丈夫だ」という人もいるでしょうが、私はご免です。江戸時代はよかった、徳川幕府鎖国策のおかげで日本は食料に限らずほとんど自給自足、TTPがどうの、安保条約は必要か、エネルギー問題は、デンデン(訂正、云々です)と、難しいことを考えなくてもよかったのです。ですから、安倍晋三にも同情すべき点は確かにあります。彼だって、徳川幕府4代将軍あたりだったら、「立派に」とまではいかなくても「そこそこの」出来悪将軍で何とかおさまったでしょうから。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、安倍も役人も、サラリーマンも第1次産業従事者も、江戸の昔には戻れないのです。(続く)

  参考1・直近10年の食料自給率の動向(農林水産省より)

年度 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
(概算)
カロリーベース(%) 40 39 39 39 39 39 39 38 38 37
生産額ベース(%) 70 70 67 68 66 64 66 68 66 66

  参考2・平成30年度食料自給力指標 (農林水産省より) 

  パターンA(米・小麦・大豆中心、栄養バランス考慮) :1,429kcal 

  パターンB(米・小麦・大豆中心) :1,829kcal 

  パターンC(いも類中心、栄養バランス考慮) :2,303kcal 

  パターンD(いも類中心)  :2,633kcal