<無欲の博打>「日本政界希望の星」?山本太郎と末期資本主義のあだ花・MMT、両者の危うい親和性について。3
さて、そろそろ本論に進みたいと思います。れいわ新選組・山本太郎氏が掲げた所得政策について、選挙用チラシにも公式HPにも全く財源問題には触れていないことはすでに確認しました。ただ、太郎氏の街頭演説などから、例のMMTに強く傾倒していることは間違いないと思います。ではMMTとは? 一応、ベストセラーとされる、ランダル・レイ著『MMT現代貨幣論入門』をざっくり読みました。「入門書」とは言え、500ページを軽く超える大部の著作を簡潔に要約できる能力は私にはなく、取りあえず、以下の解説記事とケルトン教授の記者会見回答要旨を元に考察したいと思います。なお、ネットで検索すれば、同様の記事がさまざま掲載されていますから、併せて参考にしてください。
MMTの骨子を簡単にいえば、自国通貨で借金(国債)ができて、それを国内で消化できる国は、財政赤字や政府債務の大きさを気にせず、継続的に財政出動できるというものだ。
「自国通貨を持たない」というのは、ユーロ圏の国のようなことである。また「国債を国内で消化できる」とは、日本のように、国債の引き受け手となる投資家が国内に多数存在するということだ。つまり、MMTではそうした国は、多額の借金をしても問題はないというのである。
この理論が注目を集めたのは、2018年の米国の下院議員選挙で女性として史上最年少の議員となったアレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏が、MMTを支持してからだ。オカシオ氏は、再生可能エネルギーの拡大など地球温暖化対策を進めて経済を活性化する「グリーン・ニューディール」を提唱しており、そのためにMMTを支持したとされる。
オカシオ氏自身が下院選で注目されたこともあり、MMTは米国で大きな論争となった。またこの時、オカシオ氏を理論的に支援したのが、16年の米大統領選の民主党予備選挙で若者の支持を集めて台風の目となった、バーニー・サンダース上院議員の経済ブレーンであった経済学者、ステファニー・ケルトン米ニューヨーク州立大学教授だった。
同教授はMMTの主唱者の一人であり、サンダース上院議員は医療の皆保険制度導入など大きな政府型の政策を主張する無所属最左派。MMTは、政府が格差拡大を解消するために積極的に財政を使うべきだと主張する、こうした人々の理論的支柱のようにも見られたのかもしれない。(以下、略)
(1)MMTは「政府が財政赤字を無視して、いくらでもお金を使っていい」とは言っていない。あくまでも「適正なインフレの範囲内で」が条件で、インフレが適正範囲を超えたときには金融政策はもちろんのこと、支出の抑制や増税で抑える。
(2)「政府の赤字は民間部門の黒字の裏返し」だと考えれば、「財政赤字≒悪」ではない。むしろ、デフレ時には積極的な政府支出を活用することが経済政策として効果的だ。
(3)MMTの限界である「適正なインフレの範囲」や「過剰なインフレをコントロールする具体的な方法」については、国や状況によって異なるので特定の答えはない。(←コレが本誌の質問への答え)
(4)MMTは「財政赤字≒悪」という従来の考え方から離れ、より積極的で柔軟な財政政策を可能にする「発想の転換」であって、政治的にはリベラル派、保守派、どちらの立場でも活用できる。
(続く)