読書会の案内

                                 乙訓読書会 例会案内

 テーマ :陰謀論の周辺、ハワード・ヒューズと3.11福島原発事故
   日時 :2019年11月30日(土曜)午後3時20分~5時45分
   会場 :高槻南スクエア1号室(ファイブプラザビル4F、阪急高槻駅南すぐ)
 参加費 :500円(今回は10月例会の続き、前回ご参加の方は無料です)
 参考図書:とくにありません(簡単なレジュメを用意します)
 話題提供:主催者より
 当日時程:3:10 受付開始
      3:20 話題提供者より、45分程度
      4:05 休憩、約5分
      4:10 意見・感想交換、約90分
      5:40 読書会・各種催しなどの今後の予定を紹介、終了後散会
 連絡先 :メール <for.your.eyes.only-2012.by.ht@ezweb.ne.jp>
        電話  <090-3843-5823 または075-956-1375>

 以下は『陰謀の世界史』(海野弘)、ハワード・ヒューズについての冒頭記述です。
 <ハワード・ヒューズ、億万長者、飛行機と映画が彼の情熱であった。そしてもちろん美しい女性に次々と夢中になった。だがある時から彼は人前に姿を見せなくなった。シークレット・サービスに守られ、絶対秘密の生活を送った。そして陰謀をめぐらした。いや彼は、世界的な陰謀が自分を狙っており、それと戦っているのだ、と思っていた。ハワード・ヒューズこそ、陰謀にとり憑かれた典型であった。彼においては、陰謀を企むことと陰謀に狙われているという妄想は表裏一体であった>
 ハワード・ヒューズ陰謀論愛好家には、非常に魅力的な人物らしく、インターネットで検索すると、さまざまな解説やエピソードが紹介されています。現在価値に換算して数兆円もの資産を持ち、映画制作会社や航空機会社を数々と設立・買収、そして、リチャード・ニクソンと深い親交を持ち、JF・ケネディやAS・オナシスとの関わりなど、彼の周辺には陰謀論的な道具立てが数多く揃っていました。
 さて、今では反原発のさまざまな活動で著名な広瀬隆氏が、かつてハワード・ヒューズ製作の映画を題材に一冊の本を出版しました。初版1982年、書名は『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』です。題材として扱った映画はジョン・ウェイン主演の『征服者』(1956年)、当時の制作費20億円は現在の100億円以上でしょう。広瀬氏著作中の記述によりますと、「後年、この映画フィルムはヒューズによってそっくり買い上げられ、彼が世界中でたった一人の観客になるという、不思議な運命をたどっている。ヒューズが支払った金額は制作費と同じ20億円。彼の行動には常に謎がつきまとい、大金を支払ってまで一本のフィルムを独り占めしようとした動機は不明」と述べています。
 今回の読書会は、映画『征服者』、広瀬隆氏の著作をもとに、そこから数十年後に起こった福島原発事故との繋がりについて改めて考察してみる機会にしたいと思います。


  

連載・右翼と左翼と無欲の博打、3(h-tomiyama)

<無欲の博打>「日本政界希望の星」?山本太郎と末期資本主義のあだ花・MMT、両者の危うい親和性について。3

 さて、そろそろ本論に進みたいと思います。れいわ新選組・山本太郎氏が掲げた所得政策について、選挙用チラシにも公式HPにも全く財源問題には触れていないことはすでに確認しました。ただ、太郎氏の街頭演説などから、例のMMTに強く傾倒していることは間違いないと思います。ではMMTとは? 一応、ベストセラーとされる、ランダル・レイ著『MMT現代貨幣論入門』をざっくり読みました。「入門書」とは言え、500ページを軽く超える大部の著作を簡潔に要約できる能力は私にはなく、取りあえず、以下の解説記事とケルトン教授の記者会見回答要旨を元に考察したいと思います。なお、ネットで検索すれば、同様の記事がさまざま掲載されていますから、併せて参考にしてください。


長内智・(大和総研主任研究員。2006年、大和総研入社。12年から内閣府で経済財政白書などを担当。14年帰任、日本経済担当エコノミスト。18年10月から現職・金融資本市場担当)

 MMTの骨子を簡単にいえば、自国通貨で借金(国債)ができて、それを国内で消化できる国は、財政赤字や政府債務の大きさを気にせず、継続的に財政出動できるというものだ。
 「自国通貨を持たない」というのは、ユーロ圏の国のようなことである。また「国債を国内で消化できる」とは、日本のように、国債の引き受け手となる投資家が国内に多数存在するということだ。つまり、MMTではそうした国は、多額の借金をしても問題はないというのである。
 この理論が注目を集めたのは、2018年の米国の下院議員選挙で女性として史上最年少の議員となったアレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏が、MMTを支持してからだ。オカシオ氏は、再生可能エネルギーの拡大など地球温暖化対策を進めて経済を活性化する「グリーン・ニューディール」を提唱しており、そのためにMMTを支持したとされる。
 オカシオ氏自身が下院選で注目されたこともあり、MMTは米国で大きな論争となった。またこの時、オカシオ氏を理論的に支援したのが、16年の米大統領選の民主党予備選挙で若者の支持を集めて台風の目となった、バーニー・サンダース上院議員の経済ブレーンであった経済学者、ステファニー・ケルトン米ニューヨーク州立大学教授だった。
 同教授はMMTの主唱者の一人であり、サンダース上院議員は医療の皆保険制度導入など大きな政府型の政策を主張する無所属最左派。MMTは、政府が格差拡大を解消するために積極的に財政を使うべきだと主張する、こうした人々の理論的支柱のようにも見られたのかもしれない。(以下、略)

 続いて、下記はステファニー・ケルトン教授が本年7月来日したときの記者会見の場で語った内容の骨子です(10月14日記事参照)

(1)MMTは「政府が財政赤字を無視して、いくらでもお金を使っていい」とは言っていない。あくまでも「適正なインフレの範囲内で」が条件で、インフレが適正範囲を超えたときには金融政策はもちろんのこと、支出の抑制や増税で抑える。

(2)「政府の赤字は民間部門の黒字の裏返し」だと考えれば、「財政赤字≒悪」ではない。むしろ、デフレ時には積極的な政府支出を活用することが経済政策として効果的だ。

(3)MMTの限界である「適正なインフレの範囲」や「過剰なインフレをコントロールする具体的な方法」については、国や状況によって異なるので特定の答えはない。(←コレが本誌の質問への答え)

(4)MMTは「財政赤字≒悪」という従来の考え方から離れ、より積極的で柔軟な財政政策を可能にする「発想の転換であって、政治的にはリベラル派、保守派、どちらの立場でも活用できる。

  普通に考えて(3)は単なる常識論、論評する意味はありません。(4)の前半は実質的な意味はなく、どのような新しい考え方も「発想の転換」から生まれるわけで、これも論評する必要はありません。後半も当たり前の話でしょう、ある経済政策が有効であると判断されたら、政治的な立場の相違に関わらず活用できるのは何もMMTに限ったことではないからです。したがって、(1)と(2)について、きっちり反論すれば、MMTがトンデモ論のレベルにすぎないことがわかるはずです。なお、MMTの主張する貨幣論には明らかな論理的破綻が認められますが、詳述を必要とするためここでは省略いたします。
 まず(2)、これがMMTのインチキを最もよく示しているので、ここから批判しましょう。ランダル・レイの「入門書」では、P52にて「すべての金融資産には、同額の、その裏返しとなる金融負債が存在することは、会計の基本原則である」と述べた箇所が(2)の主張と近似的に符合します。「近似的に符合」と述べたのはランダル・レイは少なくともケルトンよりは正直だと思うからです。
 (続く)
 
 

ご参考、10月19日読書会レジュメ

 1.そもそも「陰謀論」とは?

 △「陰謀」の字義
  広辞苑(六版) :ひそかにたくらむはかりごと。謀叛の計略
  新明解(三・五版):人に知られないようにこっそり企てた、よくない計画。法律では二人以上でする犯罪計画を指す。
 △陰謀論:「論」がつくと、「conspiracy theory」の訳語となり、意味は一種のイデオロギーとして大きくジャンプする。
  陰謀論(ブリタニカ):社会の構造上の問題を背後にひそむ個人ないしは集団の陰謀のせいにすること。一般に複雑な歴史過程を分析して、変化の動因を探ることはむずかしい。逆に特定の人間ないし人間集団の陰謀によって大衆を操縦するために、しばしばこの陰謀論がとられることになる。ナチはドイツの悲運の責任をユダヤ人や共産主義者の陰謀のせいにして、巧みに大衆の怒りをかきたてることに成功した。陰謀論は一種のイデオロギー批判ではあるが、この批判自体が社会や政治を神秘化するイデオロギーなのである。
  陰謀論研究家・海野弘明氏の見方:別紙・A

 2.陰謀論の〈仕分け〉

 A.陰謀論(的)として一定期間に流布していたものが、事実そのものとなる事例。この場合、論理的には当初の陰謀論は直ちに消滅する。事例としては「イラク大量破壊兵器存在説」
 B.被害妄想的な心理が拡大・拡散して陰謀論として存在感を持続する事例。陰謀論に否定的立場の論者は、この見方を逆用し、ほとんどの陰謀論を虚偽だとする。
 C.陰謀論的な説明が諸状況の個別的事件や証言と合致することが多いが、決定的証拠はなく、元の陰謀論が肥大化していく事例。
 D.陰謀論的解釈が、通史的な事実関係や状況的な事柄と符合して、グレーゾーンのまま陰謀論が存在し続ける事例、ただし、Cと違って肥大化しない。決定的証拠はなく、むしろ客観的研究を総合すれば、元の陰謀論が疑わしい可能性が高い。具体例としては、アメリカが日本軍の真珠湾攻撃を事前に知っていたが防御策をわざと講じず、参戦の口実に利用したとする見方がこれにあてはまる。
 現実に存在する陰謀論は、A~Dの混合である場合が多い。

 3.陰謀論の個別的事例について

 △911アメリ同時多発テロ」事件について

 △陰謀論の原型構造としての「フリーメイソン陰謀論」について

 △日本の代表的陰謀論
 A.過去の陰謀論的解釈としての代表例・本能寺の変

 B.現代の陰謀論の典型事例としてのJRA陰謀説

 別紙・A(『陰謀の世界史』プロローグより)

 <コンスピラシーとはなにか>
 さて、コンスピラシーとはいかなるものか。コンは共に、一緒に、という意味で、スピラシーは息をする、というのが元の意味だといわれる。なぜ一緒に呼吸することが、陰謀、つまり秘密で、悪いことを企むことになるのか。スピラシーは、スピリットからきている。スピリット(息、精神)には酒という意味もあり、中世の錬金術では魔法の液体のことであった。見えない精神、魔法の液体といった秘密めいた空気がそこに漂っているのかもしれない。コンスピラシーが悪い企みとなるには、コンという接頭辞によるのだろう。コンは、共に、でもあるが、コントラ、つまり反対する、の略でもある。
 以上のようなプロセスで、コンスピラシーは一緒に息をする、心を合わせるという意味から、共謀することになり、コン(反対する)という意味が重ねられ、悪いこと、秘密のことの企み、の意味になっていったのではないだろうか。
     (中略)
 ドン・デリーロは、なぜか日本で紹介が少ないが、アメリカで注目されている作家である。『リブラ 時の秤』は、ケネディ大統領暗殺事件をテーマに、その犯人とされるリー・オズワルトを主人公とした問題作である。ここに出てくるニコラス・ブランチは、CIAの元上級情報分析官で、ケネディ暗殺事件に関する秘史の執筆を委嘱されている、ということになっている。そして与えられた部屋で、もう15年も仕事をしているが、いつ完成できるのかわからない。
 この作品の一節は、コンスピラシー・セオリー(陰謀史観)の原則を鮮やかに語っている、と私には思える。私がその基本構造と考える2つの原則をあげておきたい。
 第一の原則は、この世のすべてのものはつながっている、というものだ。あらゆるものがつながって、蜘蛛の巣(ウェブ)、網(ネット)をなしている。したがって、どんなつまらないものにも(秘密の)意味があり、落とすことはできない。ユダヤ人、フリーメイソン、宇宙人、CIAとさまざまな陰謀論があるが、結局、それらはすべてつながっている、というのが陰謀史観である。そして、すべての陰謀は、究極の、唯一のマスター・プランにたどり着く。まったくかけはなれたものを、いかに結びつけるかが(陰謀論者の)腕の見せどころである。
 2つ目の原則は、陰謀史観にとって、すべてのものは、今という1つの時しか持たない、というものだ。すべてが今の瞬間のためにある。たとえば、何千年も前の古代エジプト人のコンスピラシーが、まったく失われもせず、変化もしないで、今に生きている。変化もなく、今しかないのだから、セオリーを史観と訳すのは適当でないかもしれない。
 二つの原則は、同じことをいっているのかもしれない。あらゆるものがつながっていて、意味がある。その意味は、あくまで今を説明するためのものである。
 コンスピラシー・セオリーの面白さは、これらの原則からきている。なんでも結びつけて、あるセオリー、秘密の意味を読むことができる。特に、20世紀末になって、陰謀のネットワーク化、グローバル化が進み、全体的、体系的な構図が整備され、まとめられるようになってきた。
        (中略)
 コンスピラシーにおいて、コンスピレーター(陰謀者)とセオリスト(陰謀解読者)が対立している。セオリストは陰謀を企む<彼ら>をあばく。セオリストの<彼ら>への態度により、セオリーも変わってくる。<彼ら>の存在を本気で信じ、激しい敵意を燃やす者から、そうだったら面白い、という想像を楽しむものまである。信じる人から、半信半疑で面白がるマニア、そして、そのセオリーに断固反対する人までいる。コンスピラシー・セオリーを政治や思想として受け取って賛成か反対かを表明するか、文化として、たとえばSFでも読むように楽しむか、という両極がある。
 セオリストがなんのためにその説を立てているかにも注意しなければならない。なぜユダヤ人やフリーメイソンを攻撃するのだろうか。<彼ら>に反対する勢力に頼まれているのだろうか。その時は、セオリーは、陰謀をあばくだけでなく、自ら陰謀になっていることになる。
 陰謀論はおどろおどろしく、時には荒唐無稽である。それにもかかわらず、私はそれにひかれる。なぜなら、その説がたとえナンセンスであろうと、それを信じ、それをかつぐ人がいれば、やはり、ある意味を持つからである。
          

 


  

 

 

 

連載・右翼と左翼と無欲の博打、2(h-tomiyama)

<無欲の博打> 「日本政界希望の星」?・山本太郎と末期資本主義のあだ花・MMT、両者の危うい親和性について。2

  情況と同時進行して書く「日々短観」は、なかなか厳しいですね。山本太郎氏の政策「消費税廃止」を「すぐやります」は無理っぽいことを述べる予定でしたが、<本尊様>のほうが、先取り修正したようで、「れいわ・山本代表、消費税5%減税を旗印に安倍政権打倒をよびかける」というニュースが流れています(10/16に別掲)。「消費税5%減税」を軸に野党共闘を目指すみたいですから、明らかに本格的路線修正、もちろん、大賛成です。現実の経済状況は生き物みたいなものですから、10%になったものが、いきなりセロ%に戻れば、これは30年近く時代を逆行するわけで、<生き物>が環境不適応となって、ショック死するかもしれません。妥協できるレベルなら躊躇なく妥協する、それがリアルポリティクスというものです。あの共産党でさえ、どんどん路線修正して、今なら戦前の本格右翼レベルと「反安倍」で共闘できるところまできてますからね。安倍晋三を「最右翼」とか「戦後最悪の首相」だとか「町内会の役員程度のレベル」と評するのは、とんでもない間違い、そろそろやめたほうがよいと思っています。私、以前「安倍は町内会役員程度がいいところ」と言って「それは世の中の町内会役員に失礼だ」と叱られました。確かにそうです。安倍晋三に町内会役員は務まらない、生身の人間として他者と直接やりとりして調整していく町内会役員は、第一に人格を問われる場面が多い。安倍には無理だ、断定して間違いないと思います。はっきり言って、彼は刑務所に入るべき人物ですよ(項を改めて記載予定)。別掲の鼎談にて、平野貞夫氏が「山口組の4代目が、戦前の日本の戦争、あれは侵略戦争だと思いますか、と問われて、当たり前だ、侵略戦争だ、よその縄張り荒らしに入ったのだから」、4代目がそう答えたことを引き合いに出して「山口組の組長に首相は務まるが、安倍晋三山口組の組長は絶対務まらない」と笑いながら言ってましたが、安倍晋三の余生にふさわしいのは、せいぜい刑務所の囚人が輪番でやる便所掃除あたりでしょう。私は寛大なのです。先日、久々にネット掲示板を覗いたら、「安倍首相、内乱予備罪で刑事告訴……」という記事へのコメント欄に「死刑相当が妥当」と言ってる人がいました。この意見、時代が時代ならあり得たかもしれません。なにせ、天皇退位式という最高度の国家行事の場で天皇に対して「早く死ね」ともとれる「大失言」をやらかして、謝罪するどころか、内閣府に自らの発言を全面否定させたのですから、安倍の望むとおり?戦前回帰したら軍部は黙っていませんよ、「国家反逆罪」とか「大逆罪」で首を吊るされても不思議はないでしょう(この問題も項を改めて述べます)。

 余談が長くなりました。今回はれいわ新選組・太郎氏の消費税即時廃止方針に関連して、財源問題について論評する予定でしたが、太郎氏の方針転換に伴ってこれは次回にまわし、選挙用チラシについて一点だけ批判記事を記しておきます。
 前回記事にて「100%不可能な」政策があると指摘しましたが、太郎氏ファンの方から「そんなのある?それ何?!」と尋ねられました。政策チラシの1から5、すべて細かく批判したいところがあるのですが、自民党なんかもっと酷いし、揚げ足取りだと言われかねないので、一点だけ。
 選挙用チラシの5を以下そのまま引用します。
「5 一次産業個別所得補償
 食料安全保障は国を守る上で最重要事項。あまりに低すぎる食料自給率を100%目指して大改革。第1次産業に就けば安定した生活が送れるよう政府が個別補償」
 上の選挙公約中の「食料自給率100%」は100%無理です。自給率100%を目指すこと自体が現実的に無理ということもありますが、これは本質的に間違った政策だと思いますね。単に「食料自給率」という場合、通常は「総合食料自給率」を指すわけですが、これにも「カロリーベース総合食料自給率」と「生産額ベース総合食料自給率」という概念があり、マスコミなどが農林水産省の意向を「忖度」して「日本の食料自給率がとうとう史上最低になった」と煽り記事を書いているのは、前者のほうです。後者の「生産額ベース」のほうは、ここ10年ほどは60%台後半で安定的に推移しています。はっきりとした国際比較を調べたわけではありませんが、この数値はG7国の中で極端に低い数字ではありません。日本は島国・先進国なので何かにつけてイギリスとよく比較されますが、イギリスの「生産額ベース」は60%を割っています。「いや、やっぱりカロリーベース自給率が低いのは問題だろう」という声が聞こえてきそうですが、そもそも食料自給率を個別に分類して議論することは、あまり意味はないと思います。参考2をご覧ください。「カロリーベース自給率」を重視して自給率を上げたいのなら、それはそれで可能です。パターンDを指標にとった食料政策を選択すればよいのです。でも、食べ物への好みが多様化する時代に、そんな政策が広く受け入れられるとは到底考えられません。「穀物自給率100%」「芋自給率100%」「大根自給率100%」etc.  これなら安心だという人がいるでしょうか? まあ、「毎日毎日、オレは芋と大根だけ食ってても大丈夫だ」という人もいるでしょうが、私はご免です。江戸時代はよかった、徳川幕府鎖国策のおかげで日本は食料に限らずほとんど自給自足、TTPがどうの、安保条約は必要か、エネルギー問題は、デンデン(訂正、云々です)と、難しいことを考えなくてもよかったのです。ですから、安倍晋三にも同情すべき点は確かにあります。彼だって、徳川幕府4代将軍あたりだったら、「立派に」とまではいかなくても「そこそこの」出来悪将軍で何とかおさまったでしょうから。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、安倍も役人も、サラリーマンも第1次産業従事者も、江戸の昔には戻れないのです。(続く)

  参考1・直近10年の食料自給率の動向(農林水産省より)

年度 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
(概算)
カロリーベース(%) 40 39 39 39 39 39 39 38 38 37
生産額ベース(%) 70 70 67 68 66 64 66 68 66 66

  参考2・平成30年度食料自給力指標 (農林水産省より) 

  パターンA(米・小麦・大豆中心、栄養バランス考慮) :1,429kcal 

  パターンB(米・小麦・大豆中心) :1,829kcal 

  パターンC(いも類中心、栄養バランス考慮) :2,303kcal 

  パターンD(いも類中心)  :2,633kcal  

 


 

 

 

れいわ・山本代表、「消費税5%減税」を旗印に「安倍政権打倒」を呼びかける(HARBOR BUSINESS Onlineから転載)

れいわ・山本代表、「消費税5%減税」を旗印に「安倍政権打倒」を呼びかける
https://hbol.jp/204097
2019.10.15 横田一 ハーバー・ビジネス・オンライン

消費税廃止したマレーシアを視察、データをもとに聴衆に説明


9月24日、札幌市内で街頭演説をする山本太郎代表

 参院選で2議席を獲得して脚光を浴びた「れいわ新選組」の山本太郎代表が、北海道を第一弾にした全国ツアーを9月18日から開始。「消費税5%減税」を目玉政策にした「安倍政権打倒」を呼びかけ始めた。

 9月24日の札幌駅南口での街頭記者会見には、約1000人が集まった。

民主党政権の誕生前を彷彿させる熱気と聴衆の数でした。聴衆からの質問にていねいに答えながら、データをもとに消費税廃止などの政策を説明していく発信力は、小泉進次郎環境大臣以上でしょう」(札幌市民)

 そんな熱気が最高潮に達したのは、「政権交代の旗印として消費税5%減税を掲げよう」と山本代表が訴えたことに聴衆が呼応、大きな拍手が沸き起こった時のことだ。

 山本代表の訴えの特徴は、政策の裏づけとなるデータを示しながら説明していくことだ。消費税廃止(減税)の説明で用いたのは、立憲民主党の中谷一馬衆院議員から誘われて8月下旬に視察したマレーシアの経済指標だった。

 マハティール首相が消費税廃止を掲げて政権交代を果たした同国では、実質国内生産(GDP)が2019年四半期で前年比4.9%も上昇していたのだ。これに対して、日本は1.2%増と低迷している。同時期の個人消費を見ても、マレーシアが7.8%増に対して日本は0.7%増と、差は歴然。消費税廃止の効果は明確に現れていたのだという。

「マレーシアにできた消費税廃止が日本でできないはずがない!」と強調


8月に視察したマレーシアの経済指標データを示し、消費税廃止のメリットを紹介

 ただし、消費税廃止に伴う課題についても山本代表は説明。「マレーシアは消費税廃止による税収減を埋め合わせようとして、高級品購入に対してかかる間接税(SST)を復活させた。しかし、これだけでは税収減を補填しきれないので、さらなる所得税強化を検討している」ということも解説した。

 そして、消費税廃止後の消費の推移をグラフで示したうえで「マレーシアの消費税廃止は正しい政策選択であった」と山本代表は結論づけた。

「消費税廃止で増えた消費は、間接税復活で減ったが、再び上昇に転じた。注目点は、間接税復活で減ったとはいえ、底(消費税廃止後、最も下がった時期)の消費額は消費税廃止前よりも大きいこと。税収不足分はさらなる所得税アップや、消費が増えたことによる将来の税収増で埋めることが可能だろう」

 一連のデータを説明したうえで、山本代表は「マレーシアにできた消費税廃止が日本でできないはすがない!」と強調したのだ。

 マレーシア視察報告をしながら消費税廃止を訴えるのは、山本代表の“定番ネタ”となっていた。札幌に続く翌25日の旭川での街頭記者会見でも、同じデータを大画面に映し出して説明。北海道ツアーを終えて、消費税が10%に上がった10月1日の新宿街宣でも、同じパターンで紹介していた。



連載・左翼と右翼と無欲の博打、1(h-tomiyama)

<無欲の博打> 「日本政界希望の星」?・山本太郎と末期資本主義のあだ花・MMT、両者の危うい親和性について。1

 最初にお断りしておきますが、私は山本太郎氏には悪感情を持っていません、と言うより好感を持ってさえいます。社会的弱者に寄り添う姿勢、利己心を退けた清潔感際立つ人物像、若さとバイタリティーがあふれる行動力などなど、少なくとも人物としての出来栄えは出色だと思っています。だからこそ、彼のもとに多数の異能のボランティアが集まり、個々には小口であっても驚くほど多数のカンパがあり、短期間では異例の多額の政治資金が集まったのでしょう。しかしです。「人物をとるか、政策をとるか」という昔から常に発せられる問いに答えれば、やはり、「政策をとるべき」とのセオリーに従うのが常道であろうと思います。ですから、私は太郎氏が政治家として更なる成長をしてほしいとの思いを込めて、僭越ながら意見を述べたいのです。

 先の参院選で大ブレークした山本太郎さん、その政策チラシ、「政権とったらすぐやります!」との見出しをつけ、8つの政策を並べています。さらりと見て、100%不可能なものを含めて相当に無理っぽい感じがしました。まず、「消費税は廃止」、これは賛成です。ただ、「すぐやります」が「廃止に向けての検討をすぐ開始します」という意味なら問題ないと思いますが、ネット経由の太郎さんの街頭演説を聞いていると、どうやら「即時廃止」を本気で考えているようなニュアンスが伝わってきて、印象として、何となく危うい雰囲気を感じてしまいました。公式ホームページでは、ここのところは「まず、5%に減税」と現実的なプランに修正されていますが、「すぐやる」と「まず、5%に減税」のズレ、全廃までのプロセスについての言及はありません。ただ、彼の政権奪取がありうるとしても、「すぐに」というのは難しいですから、選挙用チラシに、この程度のインパクトを持たせるのは許容範囲だとも思います。

 問題は「全国一律!最低賃金1500円 政府が補償」など、8つのうち半分の4つが所得政策だという点です(ちなみに、彼の政治家としての出発点でもある「原発即時禁止」は8番目の最後に回しているのは、経済問題以外をトップ政策に掲げたら支持が得られにくいという、選挙戦術上の配慮らしいので、この点に異論をはさむつもりはありません)。雑誌名は覚えていませんが、これらの所得政策を「すぐに」実施したら、50兆円もの財源が必要だとの指摘がありました。50兆円という数字にどれだけの信憑性があるのかわかりませんが、自民党がときどきぶち上げる「大型補正予算」をはるかに上回る予算措置が必要なのは間違いないはずです。ですから、彼の主張に対して、いろんなところから「財源はどうするのだ?!」との批判があります。その財源について、選挙用チラシは紙面の制約があり、何もふれていないのは仕方ないでしょう。しかし、「れいわ新選組公式ホームページ」をのぞいても財源問題についてはまったく触れていないし、経済政策への提言も見当たりません。本気で近い将来の政権奪取を狙うのなら、この点を批判されても当然だと思うのです。(続く)