日銀、9月追加緩和策(8月14日株式新聞記事)および<h-tomiyama>短評

 米中貿易摩擦のこじれと円高の動きを背景に、次回9月18日・19日の金融政策決定会議における日銀の一手に注目が集まっている。一部で浮上しているマイナス金利深堀りなどの追加緩和観測をめぐって、相場が乱高下する可能性がある。一方、今月22~24日には米ワイオミング州ジャクソンホールで、主要国の中央銀行幹部らが集まる経済政策の討議が行われる。
 トランプ大統領が中国との貿易交渉に「合意する準備ができていない」と発言し、9月上旬に予定されている米中閣僚級協議の中止を示唆したことを受けて、落ち着きを取り戻しつつあったドル・円相場が再び急落した。13日には一時1ドル=105円割れ寸前までドル安・円高が進んだことで、日経平均が前週比315円値下がりする場面があった。
 こうした中、市場では日銀が9月にも、マイナス0.1%に定めている現行の短期金利政策をマイナス0.2%に引き下げるほか、TOPIX型ETF買い入れ額を1兆円程度増やし、保有残高の増加ペースを従来の年6兆円から7兆円に上積みするといった追加緩和策に踏み切るという外資系証券会社の予測が話題になっている。
 9月の日銀会合は、米国のFOMC(17、18日)の直後に決するタイミングで開催される。このため、日銀は追加利下げが予想されるFOMCの結果を見て動ける。また、国内では10月に消費税率の引き上げが控え、「予防的」な追加緩和にも舵を切りやすいというわけだ。(中略)
 ポイントは、9月FOMCでの下げ幅だ。前回、市場の意に反してタカ派的な見解を述べたパウエルFRB議長だが、その後の米中摩擦の激化を踏まえると利下げを継続せざるをえない状況とみられる。仮に前回と同様の0.25%の利下げでは日銀は動かないかもしれない。だが、0.5%という大幅な引き下げがあればどうだろう。
 ジャクソンホールの討議は、そうしたFRBの出方を測る上で重要となる。出席・講演する可能性のあるパウエル議長が再びハト派的なスタンスを打ち出せば、市場の見方は一気に9月FOMCでの0.5%利下げに傾く公算が大きい。そうなると、急激な円高を防ぐ必要性からも、日銀の追加緩和観測が一段と膨らみそうだ。

 〈h-tomiyama〉の短評
 日銀による、これ以上の追加緩和策は、日本の金融市場環境に大きな弊害をもたらす可能性がある。現状でさえ、地銀の経営状態は悪化に歯止めがかからない中、マイナス金利深堀りは更に深刻な事態を招く引き金になりかねない。ETF買い増しも、〈危険な道〉だと思う。東証1部の時価総額は8月13日現在で約560兆円、浮動株式30%と見積もって、流動株式の時価総額は約170兆円だ。日銀のETF資産は30兆円に迫る。すでに危険水域を超えている。加えて、年金機構のETF・株式購入、上場企業の自社株買いによって、流動性が損なわれる状況で、日銀のETF買い増し策が実施された場合、市場の歪みが更に進行してしまう。日銀は、目先の状況に右往左往せず、日本経済の将来に責任を持つ姿勢を堅持するべきだと思う。