「日本一新の会」メルマガ441号よりーー第25回参議院通常選挙の総括ーー


◎「日本一新運動」の原点―441 
                  
            日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

〇 時局妙観

参議院選挙 ―つれづれ草―)
 第25回参議院通常選挙をひと言で総括すれば、日本のデモク
ラシーが『集団的政治引きこもり症候群』状況になったことだ。
それは、投票率が48.80%で、最悪だった平成7年の、44.
52%に次ぐ歴代2位という、悲劇の発生である。
 国政選挙の投票率が50%を割るということは、その国のデモ
クラシーの正当性に関わることで、当然原因と責任の検証が必要
となる。平成7年のケースと今回の原因に共通なものと異なって
いるものがあることを明確に理解しておくべきである。両方とも
「政治不信」が根底で共通しているが、今回の場合は、テレビが
意図的につくり出した「政治的無関心」がある。
 平成7年の場合は前年の6月に成立した「自社さ政権」に対す
る国民の審判であった。社会党比例区9地方区7の当選数16
という大惨敗で、選挙前の63議席を38議席に減じた。「自社
55年体制」で、憲法や安全保障等の基本政策で激しく対立して
いた両党が、細川・羽田と続いた非自民政治を投げ棄てて自民党
と連立政権を組んだことに対する国民の政治不信が原因であった。
社会党支持者の棄権や忌避があからさまになった。
 今回の場合の原因をどう理解すべきか。傍証ではあるが、国の
内外に重大問題が山積するなか、テレビ番組での討論時間が少な
かったこと。また討議の内容に問題を炙り出す工夫が足りなかっ
たことだ。「BSでは専門的討議をやっていた」と開き直るテレ
ビ局もあると思うが、BSの政治番組は、政治に関心のある人が
視聴する番組である。一般の有権者が政治に関心を深めるには、
地上波テレビの番組でわかりやすい報道が必要だ。
 選挙期間の前後を含め、災害や事故・事件の多発なども事実で、
そのための番組編成に苦労したこともわかるが、それをタネにし
参議院選挙関係が、意図的に疎かになったといえる。NHKは
明らかに「権力への忖度」としか理解できない報道もあり、社会
木鐸たるマスメディアの役割を疑う状況がしばしば感じられた。
 残念なのは、マスメディアをして「政治的無関心」を増長させ
た原因は、与野党の政党側にある。不思議なことはこの度の参議
院選挙で「敗北」を認める政党がひとつもないことだ。「勝」と
「負」の判断を単純に改選議席との比較で論じるわけには行くま
い。その基準だけでいうなら、「立憲」は9から17の倍増に近
く、大勝利だ。
 しかし、問題がないわけではない。平成28年の解散総選挙
民進党は分裂。期待と疑惑のなかで生まれた「立憲民主党」が、
野党第一党として、野党共闘で安倍政権と対峙するのかしないの
か、「立憲ファースト」のやり方に多くの国民が不満を持つとと
もに、その中核支持母体である「連合」からも不協和音が聞こえ
てくるほどである。さらに、大勝利を喜ぶわけにはいかない理由
がもうひとつある。一昨年の衆議院比例合計と、今回の参議院
例票の差は約130万の減で、党としての〝賞味期限〟に問題が
ある。
 今回の参議院比例では、共産党が前回の衆議院比例より18%
ほど得票を増やしていること。さらに突然の結党と比例区進出で
220万を超えた「れいわ新選組」の国民的人気が、次の選挙で
「立憲」を食うから、枝野代表も枕を高くして眠れないだろう。
早速、有力野党が「れいわ新選組」に秋波を送ったのはこういう
ことである。ともあれ、次期総選挙で完全な野党共闘ができれば、
政権交代は現実のものとなることを示した選挙でもあった。

(不可思議な安倍首相の言動とメディアの責任)
 自民党は深刻だ。改選議席を10減じ、新勢力を113と単独
過半数を割り、さらに憲法改正勢力(3分の2の発議)を失った。
連立相手の公明党が3議席の増で、安倍政権のなかでの公明党
「生命維持装置」から「三頭一体」となった。最早連立政権では
なく、自民党創価学会の矛盾を共有し崩壊への坂道だ。これを
安倍首相は「国民は与党で安定政治を選んだ」と勝利宣言を行い、
さらに「国民はちゃんと憲法改正の議論をさせようということだ」
として、「私の使命として残された任期の中で、憲法改正に当然
挑んでいく」と、宣告した。憲法改正手続による改正は不可能だ。
 憲法の壊乱が日常的になる。憲法99条(尊重義務)に、刑法
内乱罪の実定法ことを、憲法学者も政治家も認めるべきだ。
 安倍首相の異常発現を朝日新聞ですら「与党が国政選挙で連勝
を6に伸ばし、当面は安定した政権運営ができる基盤を改めて確
保した」と総括している。
 今回の参議院選挙では警察権力が安倍首相の街頭演説への合法
的抗議に積極的に干渉するファシズム化が見えた。マスメディア
が創造し、権力を支えている現実は深刻だ。      (了)